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更新日 2018.07.14
カテゴリ:司法書士の仕事
自筆証書遺言が使いやすくなります!

 

平成30年7月6日,「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立しました(同年7月13日公布、施行日については本文末尾参照)。これは民法のうち相続法の分野についての改正になり、「自筆証書遺言」の方式の緩和も含まれています。

 

 

遺言は通常、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」のどちらかが使われます。

このうち「公正証書遺言」は、公証人(多くの方が元裁判官や元検察官という法律の専門家)が遺言の作成に関与するため、後で内容の無効が問題になる可能性は低く、また、遺言書を公証役場で保管してくれるため、保管中に紛失や改ざん・隠匿の恐れも低く、非常に確実な方法と言えます。一方で、公証人にかかる費用や公証役場に行く手間などがかかります。

 

これに対して、「自筆証書遺言」は公証人に対する費用はかからず、公証役場に赴く手間も省けますので手軽に利用できます。しかし、公正人、交渉役場が行ってくれることを自分でする必要があります。まず、全文・日付及び氏名を自署しなくてはなりません。

さらに公的に遺言を保管する制度がないため、遺言を自宅などに保管しておく必要があります。そのため、保管間に紛失や改ざん・隠匿の恐れがありました。また、遺言者が遺言を残していることや保管場所を相続人に告げていない場合には、遺言があるのかないのか相続人に不明な場合も少なくありませんでした。

 

そこで、今回、自筆証書遺言をより使いやすいものにするために、以下のような改正がなされました。

まず、遺言のうち「財産目録」(財産を記載する部分)については、自分で書かなくても、パソコン等で打ち出したものを添付してもよいことになりました。これにより複数の不動産や預貯金口座をいちいち手書きしなくても良くなりますのでかなりの負担軽減となります。

また、法務局において自筆証書遺言を保管してくれる制度も新しく新設されますので、遺言をタンスの奧にしまっておく必要もなくなり紛失や改ざん・隠匿の恐れも低くなります。さらに遺言の有無を法務局に照会することもできるようになります。

 

自筆証書遺言は、このように便利になりこれから利用者が増えると思われますが、手軽な面がある一方で、法律家の関与なしに作成することによるリスクもあります。すなわち、内容や書き方に不備があればせっかく書いた遺言の効力が十分に発揮されないことや、時には無効になってしまう恐れもあります。

 

遺言は自らの想いを形にするとともに、相続人間の争いを未然に防ぐ有効な方法です。確実に遺言を残したい方はまずは専門家にご相談ください。

 

※民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日は,原則として,公布の日から1年以内に施行される(別途政令で指定します)こととされていますが,遺言書の方式緩和(前記3(1))については,平成31年1月13日から施行されます。

 

司法書士 西出泰久(078-802-1030)